腐蝕式

TSプレイ日記と二次創作(女性向け)


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眠りによせて(トリックスター)

2006/12/17 (Sun) 21:55|小説|Comment(4)
読み難い上に頭緩い感じの内容です。
特に意味もなければ誰のこととも書いていませんので、ご想像の侭に。
でもイメージはうちのたぬk)`ω゜)・;'.、

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 不格好にひしゃげたケースから、辛うじて折れずにいた煙草を取り口唇に銜える。島に持ち込んだ一箱、最後の一本。バーチャルゲームの舞台として手を加えられた孤島に煙草屋や自動販売機がある筈もなく、ヘビースモーカーの友人は初日早くもぐったりしていたことを思い出した。禁煙せざるを得ない状況に置かれ、そんな彼も今ではすっかり健康になったと聞く。火を点けて深く肺まで吸い込めば、粘膜を焼かれる刺激に躯をくの字にして噎せ込んだ。まるで覚えたてのガキのようだと苦笑が浮かぶ。足下には黒々と澱んだ、人食い伝説の沼。落ちればまぁ、確かに這い上がれそうにもない程の粘度に見える。ぽつぽつと食い残しのように取り残された小島を繋ぐ橋の上、一人ごちて眼を閉じた。



 酸素量の低下により、脳が緩やかに麻痺していく。浮かぶのは脈絡のない事柄、断片的に思い出されてはまた深く沈む、その繰り返しである。

 島に来るより以前、嘗て腹に負った傷がある。雨の日だったように思う。気が付いたら病室の白い天井を眺めていた。それ以外には何も覚えていない。傷自体は間も無く綺麗に癒えたのだが、何故か時折疼くことがあった。苦痛であるが、その感覚を厭ったことはない。痛みを感じている時だけは、何も考えないで済む。余計なことを思い出すこともない。密やかに精神を攻めるものの正体すら曖昧にしてくれる。自傷に手を出すことはなかったが、まるで麻薬だった。自分の性癖を意識したのも、煙草を吸うようになったのもその所為だったように思う。ある時は僅かな痛みを増長させるように、またある時は痛みを思い出すように、空の体内を煙で満たしては喘いでいた。

 決して人が死ぬことのない不思議な島。どれだけ深手を負おうとも最後の一線を越えることはなく、どのような力が働いているのか知らないが、回復力も以上に高い。この時ばかりは職場が責任を他所に押し付ける教育者の集まりであったことに感謝した。家出をした愛しの不良生徒のお守り役という口実でもなければこの島に来ることはなかった筈だと。連日のように無茶を重ね、刺激と快感を得て、その訳を知らぬ友人に時折無鉄砲さを諌められ、ない傷の疼きを感じることもなく、歪んだ満足感に浸されていた。

 今ではその生活にも単調さを感じ始めている。





 フィルターの焼け焦げる匂いが鼻につく。一口吸ったきりで燃え尽くした葉。長く伸びた灰が燻る紫煙と共に風に揺れ音もなく落ちた。指先にちりちりと熱を感じ始めて漸く火種を潰す。僅かに漂う、甘苦い残り香。吸い殻は、少し考えてから橋の下に混沌と蟠る沼へ投げ落とした。小さな燃え差しは泥に飲み込まれ、すぐに見えなくなる。視界の角にちらりと、環境保護活動をしている少女が顔を顰める姿が入ったが、視線合わせることをせず、頬杖から崩した腕に頭を乗せ、意味もなくへらりと笑った。心地よくも不快にとろけた思考は久々の刺激の所為、だと思う。


 暮れかかった空が妙に赤く、瞼の裏に毒々しい光を焼き付ける。眼を閉じていても開いていても大差はない。欄干に背を預け、脱力し地面に座り込む。冷気を帯びた風が夜気を連れてくる。ずく、と有りもしない傷が疼いた。熱が宿る。苦痛に肩が震える。呼吸が荒いだ。そっと腹に手を当てれば、焼けた視界の先で幻を視る。赤ん坊のように膝を抱え、小さく丸まり、眠るように意識を失った。









 近くを通り掛かった友人に、鼻っ面を容赦なく引っ叩かれて眼を覚ましたのは数時間後のことである。何も思い出すことはない。腐りきった本性だけが静かに蟠り、日常に埋もれ、其処には煙草の空ケースだけが残った。


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眠りによせて / L'Arc-en-Ciel
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